マーケティングなんか糞くらえ! 反社会的社会派出版社、東京キララ社(特殊顧問・根本敬)

f:id:Himeeeno:20150205162935j:plain

いつでも傷つく準備はできているけれど、できることなら傷つきたくないというのが本当のところです。そんな弱虫の私を絶対に傷つけないのが、東京キララ社です。

代表であり、和モノDJでもある中村保夫さんは、少しだけ酔うといつも「21才でこんな楽しいこと知ったら大変だよ」と、私に本当のことを言います。

マーケティングなんか糞くらえ! 東京キララ社という出版社でありムーブメントを率いる中村保夫さんのインタビューを、遅ればせながら新年の挨拶とさせてください。

 

f:id:Himeeeno:20150205163658j:plain

[このインタビューは大学の課題制作のため、2013年に行われたものです。]

 

テレビでは見られない、ラジオでも聞けない、私たちの知らない面白いことを、頑なに紙媒体で発信し続ける東京キララ社。”ちょっとアレ”な出版社を立ち上げた中村保夫の粋な姿勢に学ぶ。

 

何百年も手元に残るものづくり

――情報が溢れかえって、誰もが不感症になりつつある中で、東京キララ社は常に世間を刺激し続けていますよね。

中村保夫(以下、中村):僕は好奇心とIQは比例していると思ってるんです。テレビから垂れ流される情報だけで満足する人はそれまででしょう。でも、それ以上を求める人たちの欲を満たすのが出版社の本来あるべき姿だと思ってます。

――東京キララ社の書籍は、メディアにあまり露出しないインディーズアイドルの写真集や、元信者の方が監修した『オウム真理教大辞典』など、好奇心が強くないと辿り着けない書籍が多いですね。

中村:誰もそういう書籍を出版してない。じゃあ、うちでやろうと思って。好奇心の強い人がいるんだから、供給する人がいないと。みんなが同じ情報しか持てない世の中は面白くないでしょう。

――電子書籍が登場してからも、紙媒体にこだわり続けている理由を教えてください。

中村:確かに電子書籍の方がお金もかからないのに阿呆だと思われてるかもしれません。でも、日本人は所有することに価値を見出せる数少ない人種だと思ってるんです。電子データじゃなくて、装丁もきちんと作れば、手にとってくれた人の手元に何年でも何十年でも残る。更に言うと、紙媒体であれば、何百年後の人が読む可能性だってあるじゃないですか。もちろん内容も大事だし、見た目もちょっとお洒落してるくらいの方がいいでしょう。そういう作り方をしてるんです。

 

衝撃だけでは人の心に残らない

――マニアの方に関する書籍を多く出版されていますが、中村さん自身にフェティシズムな一面はないのでしょうか。なんか、いつもフラットですよね。

中村:強いて言えば、インクの匂いですかねえ。実家が製本屋だったので、子供の頃はローラーコンベアに飛び乗ったり、裁断くずを溜めておくプールにダイブして遊んでました。その頃のインクの匂いが染み付いて離れないんですよね。

――それで今もきちんと印刷して書籍を作り続けているのかと思うと、少しロマンチックですね。

中村:そうかもしれません(笑)。僕の仕事で大事なのは、深く傾倒するより視野を広く持って面白いものを見つけることだと思うので、あまりフェティシズムなところはないかも。あと出版する上で、良いこと悪いことを判断することも大事な仕事です。以前、とある亡くなった有名人の写真集の制作を請負ったときに、クライアントが、死に顔の写真を掲載しようと言ってきたんです。当然、反対しました。確かにスキャンダラスなものを載せれば売れるかもしれないけど、なんでも晒せば良いってもんじゃない。衝撃だけじゃなくて、そこに意味がないと見てる人の心には残らないですよ。

 

目指すは、社内報!

中村:いま夢があって、と言ってもそんなに大きな夢じゃないんですけど。やっぱり好きなもの作りたいじゃないですか。五百部でも、千部でもいいんですよ。『東京キララ社、社内報』が作りたい。

――あはは! いいですね。

中村:内容は他愛もないけど、キララ社に縁のある人たちに参加してもらうんです。監修は根本さん*1で、デザインは河村くん*2KEIさん*3や、宇川さん*4に好き放題やってもらいたいですね。社内報なんでオススメランチのコーナーとか作って。

――中村さんがご飯食べてるだけの記事とか(笑)

中村:そうそう(笑)CD時代に再評価された古いレコードみたいに、電子書籍が主流となる時代がきても、いつまでも残る、何年経っても本棚に飾られるなる本が作りたいです。

 

中村保夫

1967年、神田神保町の製本屋に生まれ、幼少時より紙とインクの匂いに包まれて育つ。小学校時代は天才と呼ばれるが、中学に入ってからは近所の親から「遊んではいけない子」の烙印を押される。早稲田実業中、高と通うも、その間は酒やギャンブル、ディスコなどに明け暮れる。明治学院大学を3日で卒業。ニート生活を満喫した後、九州のデベロッパー、東京の左翼系出版社で12年間のサラリーマン生活を全う。21世紀の幕開けとともに出版社・東京キララ社を立ち上げる。本職は編集者だが、必要に迫れば映像も作り、呼ばれればレコードを回す。本気も本気、ケンカ腰でモノを作る姿勢が、社会から行き場の失った一部の人たちから評価されていると信じたい。

f:id:Himeeeno:20150205160109j:plain

 

東京キララ社

新刊情報

f:id:Himeeeno:20150205160550j:plain

『和ラダイスガラージ BOOK for DJ』
発行・発売:東京キララ社
ISBN978-4-903883-08-3 C0073
定価:本体2,000円(税別)
175mm×175mm /並製/ 218 頁

 

従来の懐古主義的な楽しみから、ダンスミュージックの1ジャンルとして進化 を遂げている和モノ・シーン。その最先端を突っ走ってきた「和ラダイスガラージ」が遂に書籍化 !

〈和ラダイスガラージとは〉
2011年、永田一直によって純国産音源のみをクラブ・マターでプレイするパーティーとしてスタート。現在まで、MOODMAN、池田正典、ECD常盤響、CRYSTAL、Mr.MELODY、RIOW ARAICHERRYBOY FUNCTION、二見裕志、 山辺圭司など各界のDJを招聘。代官山UNIT や六本木SuperDeluxeで行われた特別篇では、渚ようこギャランティーク和恵、伏見直樹幻の名盤解放同盟一十三十一、 ((( さらうんど )))、ビイドロ砂原良徳などの豪華ゲストを迎え大盛況となった。これまで5度に渡る全国ツアーも敢行。近年急速に増えつつある、いわゆる和モノDJイベントの中でも最も注目を集めているダンスミュージック・パーティーである。

 

 

*1:特殊漫画家の根本敬東京キララ社の特殊顧問でもある。

*2:コラージュアーティストでデザイナーの河村康輔。大友克洋GENGA展やエヴァンゲリオン展のヴィジュアルデザインを手がける。

*3:ヤクザ時代にFBIのおとり捜査で捕まり、殺人事件が日常的に起きる米国刑務所で闘い続けた日本人。

*4:宇川直宏。グラフィックデザイナーで映像作家。DOMMUNEの代表。AB型。