本棚の神様が歌い踊るサラヴァ東京に行ってきました
私は絵が苦手です。子どもの時から体育は苦手でしたが、体育の時はクラスに何人かいる運動音痴な子でした。でも図工の時間はなんというか、下手という領域にも達しておらず、上手な子たちの作品より話題になってしまうほど、絵が下手なのです。
なので、漫画というのは人が書いているものではないのだと思ってました。
当時の私の頭の中はこうです。
こんな絵を人間が描けるわけがない→きっとこういう絵を描ける工場があるに違いない→でも工場の機械に記録するための絵を描いたのは誰だ→もしかしたら日本中にひとりくらいはこんなに絵のうまい人がいるのかもしれない→じゃあこの背表紙に名前が書いてある作者は何を描いてるんだろう……?
なんだか、こう書き起こしてみると、単純に絵というより頭が弱かったのかもしれませんね。
こういうことで漫画の続刊が出るというのは子どもの私にとって不思議な現象でした。一体、誰が描いてるんだああ。
そんな気持ちをいまだに引きずっていて(21歳、大丈夫か)本棚にずらっと並んだ漫画の続きを読むたびに、神様からプレゼントが送られてきたような気持ちになります。
[筆者と白根ゆたんぽ先生2014.5.20]
去る2014年5月20日、東京都は渋谷にありますサラヴァ東京で、私の本棚の神様が歌い踊っていました。
スロラナSPブレメン
Epistrophy - スロラナspブレメン - YouTube
メインボーカルがギターの左手を見るたびに、フロアのミラーボールが眼鏡にちらちらと映ります。
1曲に10分ほどかけるじっくりしたステージは、後半につれて情熱的な浮遊感を増していき、奏者も長距離マラソンのゴール前のような笑みを浮かべています。
白石亜紀彦と大津真のふたりに囲まれ、ギターをつま弾くメインボーカルは、山本直樹先生です。
何度も私を熱くさせた山本直樹先生(の漫画)……。実際にお会いすると、すごく恥ずかしくて、AV女優のファンイベントに初めて行く男の子と照れが分かった気がします。
リオ・ブラボー メドレー 「電動のメリークリスマス4」より - YouTube
ライターの安田理央と川崎ぶらによるリズムボックスとアコースティックギターの、この日唯一イラストレーターも漫画家も不在のデュオでした。
カラオケに入っていない80年代の隠れた曲をカバーするというコンセプトの元、結成14年。カラオケの発達により70~80年代の名曲(A面あり)を中心に人力マッシュアップするデュオとしてスローペースで活動しています。
客席の同世代の人たちがうつむきながら肩を揺らしており、後半はあまりに緻密なマッシュアップに爆笑というステージでしたが、1曲10分超えで休みなく続くので本人たちは汗をかきながら白目むいたり目を見開いたり大変です。
暗記しきれる量ではないので、楽譜を見ながら演奏しているのですが、本人たち曰く楽譜は「見開き二頁、二段組の超級数小さめ」であり、楽曲は「プログレのよう」に長いのです。
ステージを降りた安田理央氏の「おじさんが一生懸命になるとどうしてキラキラを飛び越えてギラギラしてしまうんだろうね」という言葉が胸に沁みました。
OBANDOS
さるフェス2012 親戚(featuring OBANDOS) - YouTube
トリは「自作の楽器を展示する」がテーマのグループ展をきっかけに結成された工作展バンドOBANDOSです。
超大御所にして、ほぼ全員楽器未経験というメンバーがこちら。
朝倉世界一(漫画家/イラストレーター)なんか可愛い空き缶の打楽器。
白根ゆたんぽ(イラストレーター)Amazonダンボールで作成した弦楽器と、大人の科学の付録を改造したテルミン
しりあがり寿(漫画家)本人いわく「なんかいろいろ!」主にバケツでできたプリン打楽器。
高橋キンタロー(イラストレーター)絵画のパレットでできたバイオリンとストローで制作した笛と、なんかテープ。
薙野たかひろ(イラストレーター)輪ゴムとダンボールで制作した弦楽器。ボーカル。
なんきん(漫画家/パフォーマー)存在が芸術。
パラダイス山元(ミュージシャン/マン盆栽作家)唯一のミュージシャン!担当はホースで制作した笛。
ミック・イタヤ(ビジュアルアーティスト)たくさんのモーターで制作したキーボード。
[「なんかいろいろ!」なしりあがり寿の打楽器]
[ミック・イタヤと8個のモーターを使った自作楽器]
[左からパラダイス山本・薙野たかひろ・しりあがり寿]
演奏は朝倉世界一がその場で決めたタイトルに合わせて即興で行われます。
一曲目のタイトルは「ハチ公の調べ」
ちなみに演奏できるのはリハーサルにきちんと参加したメンバーのみ。しりあがり寿、薙野たかひろ、ミック・イタヤ、白根ゆたんぽの4人(少ない!)でした。三分ほどの演奏。
二曲目、和楽をイメージした「モヤイと和楽」
本人たちいわく「モダンになった」一曲。
三曲目「黒木香さんの焼肉の残り香 アメリカver.~安斎さんの反省付き~」
サラヴァ東京がはいっているビル(全て禁煙)の三階にある焼肉屋が元々黒木香の持ち物だったという噂と、いつも終演後にMCの安斎肇が「今日、俺、喋りすぎちゃったなあ」といつもメンバーにこぼすため反省の意を込めた、「アメリカでシングルデビューする時のための」44秒ほどのキャッチーな曲。
キャッチーな音を出せるのがテルミンとギターの白根ゆたんぽのみのため、大活躍。
四曲目「ワルツっぽいもの」
全員による即興演奏と、薙野たかひろによる「Lucy in the Sky with Diamonds」のAメロ歌唱とともに、全バンド、ベース・ドラムレスのイベントは終わっていきました。
[存在が芸術、なんきん]
終演後、にこにこと笑いながらお酒を飲んでいる神様たちを見て、紙の上であれだけの表現をし尽くしている人たちが、舞台の上で更に新たな表現を見せてくれることの喜びに酔いしれたのでした。
ところで、ミック・イタヤさんってしりあがり寿さんの漫画に出てくる人みたいだと思うのは私だけでしょうか。