地下アイドル姫乃たまの恥ずかしいブログ

1993.2.12下北沢生まれ。地下アイドル姫乃たまの主にアダルトなお仕事日記。普段の活動は「姫乃たまのあしたまにゃーな」http://ameblo.jp/love-himeno/

地下アイドルが見たエロ本業界

20124月から約2年間「チュスペ予備校」を連載していたワニマガジン社の「ChuSPECIAL」が休刊になりました。まともに休刊のお知らせすら載せられないほど、急な決定でした。

 

近年、多くの雑誌が休刊に追いやられています。そのほとんどが雑誌コードを手元に残しておくための休刊であり、事実上の廃刊です。

特にエロ本(中でもコミックではないグラビア雑誌)はインターネットの普及に押されて、凄まじいスピードで姿を消しつつあります。

アダルト業界の人間が潰れないなんて、もう昔話です。私は本当に運良く連載を持たせてもらっていましたが、真綿で首を絞められているような痛みと閉塞感は常にありました。

イス取りゲームをしている時の気持ちによく似ていると思います。

 

そんな過酷な状況の中で私は更に運良く、AV史に欠かせない人物にインタビューする新連載を持たせてもらえることになりました。

エロ本と同じく、ネットの普及によって勢いを落としつつあるAV界の陽が、本当に落ちてしまうその時まで(もちろん落ちないことを願いながら)見つめていたいという気持ちで「暗くなるまで待って」というタイトルを付けました。

第一回目のカンパニー松尾監督へのインタビューを終えたすぐ後に、ずっと担当してくれていた編集さんが、これまた本当に急に営業に異動になりました。私に連載を持つきっかけをくれた編集さんでした。

完成した原稿を彼に出せなかったのは非常に残念でしたが、新しい担当の方も珍しく、私と同じ若いエロ本好きな人で、ついに編集生活8年間で後輩ができなかった彼もいきなりふたり後輩ができたようだと営業用のスーツで喜んでくれました。

ようやく落ち着いて新しい担当の方と第二回目の打ち合わせを重ねて、代々木忠監督へのインタビューを終え、原稿を書いている最中に休刊の知らせを受けました。

担当さんとの熱心な打ち合わせ、睡眠時間を削って観られるだけ観たAVや書籍、インタビューに応じてくださった時の監督の誠実な姿勢、そして何より愛着のある雑誌がなくなるという事実に汗がにじみました。

どこに掲載されるのか、本当に掲載されるかすら分からない原稿を書くのは不安な作業でした。

 

Chuッ」はグラビアと漫画がキスをしたというキャッチコピーで、グラビアと同じ割合で漫画をいれた先駆けのエロ本です。「ChuSPECIAL」は増刊号として発売され、近年では稀な毎号撮りおろしをしている(最近は予算低下のためAVのキャプ画やパッケージ写真を使って安価で作られることが多い)エロ本でした。途中でChuッが休刊になり、なぜか増刊号の方が残る形で、ふたつ合わせて約14年の歴史に幕を下ろしました。

 

私がチュスペ予備校の連載を始めた当初、ワニマガジンのグラフ部は、おじさん主観の若くて可愛い女の子がコンセプトの「ChuSPECIAL」と、パンスト、ミニスカ、ハイヒールなど脚に偏ったフェチ雑誌「Yha!Hip&Lip」の二誌を編集していました。どちらにも読者ページはあるのですが「ChuSPECIAL」の読者ページに連載を持つことになった時、正直どうしようかと思いました。

フェチ雑誌に届く業の深いハガキ(大きな額に入ったグラビアの模写なんかも届きます)に比べて、私の元に届くハガキは「もっと安くしてください」「DVDの収録時間長くしてください」「モザイクなくしてください」(?)など、どうしようもできない要望ばかりでした。

 

ここは地道に媚びずに誠実に頑張っていくしかないと、誌面では読者のハガキに答えるほか、AVの撮影現場やアダルトイベントの体験取材レポート、カラーページになってからはなぜか四コマ漫画まで連載してました。編集さんの提案でそのほかに毎月5名限定にあたる私の直筆お手紙券も付けました。

 

いまエロ本を読んでいるのはネットを使えない4060代の男性がほとんどです。同世代にエロを紙媒体で見てやろうという人はなかなかいません。こんなに多くのエロ本の読者と交流をとれることが、私にとっては純粋に嬉しく、原稿を書くのにも慣れてきた頃、読者に変化が起こりました。

先述したような内容のハガキがだんだんとなくなり、長文や雑誌にまつわる駄洒落、人には言えない深い欲望を打ち明けるなど、雑誌を盛り上げようという内容のハガキが増えてきたのです。

 

私 はその時初めて雑誌の読者は成長するということを実感しました。これは恐らく私が何度も原稿を書いているうちに成長したからでしょう。同時にエロ本の連載 も地下アイドルの活動も、同じだということに気づきました。私が成長すれば、ファンも成長します。そして信頼関係がうまれるということです。

 

思いつきで付けたお手紙応募券は意外と好評で、数ヶ月を過ぎたあたりから毎月、数十名の読者に全て手書きで返信していました。

雑誌の感想や、誰にも話せない身の上話、障害や性癖のカミングアウト、半生を何十枚にもわたって手書きで送ってくれた人や、120分カセットテープ二本にびっしりアカペラで自作の曲を録音したもの、手作りのケーキ、クリスマスカード、年賀状、私のバースデーカード、エロ本を愛する私と読者の不器用で熱量の多いやりとりが重なっていきます。

 

休刊が決まった時、「ChuSPECIAL」 に連載を持っているライターは私しかいませんでした。連載を持っている雑誌が休刊になるのは初めてで、相談できる相手もおらず、どういう心構えでいたらい いか分からなかったです。「エロ本の休刊は日常茶飯事だからライターが雑誌に思い入れしたらいけない」と言われてそういうものかと思いました。

そ れから数日が経ち、休刊を正式に発表することになって、どう報告しようか悩んでいるところ先輩ライターから「連載は自分の子どもみたいなものだから引きず るものです。自分で納得して報告すれば次に進めますよ」と言われて、すとんと腑に落ちました。そこで初めて大声で泣くことができました。

 

私 はエロ本が好きです。昔の本当にエロ本が面白かった頃の熱気を知らない、と業界の人たちは言います。こればっかりは生まれてくるのが遅かったとしか言いよ うがありません。しかし今でも真摯にエロ本を作っているワニマガジン社のそばに置いてもらえて、私には全てが面白くて新鮮で仕方ありませんでした。いま、 ここで諦めたら私はきっと一生心の底でエロ本にしがみつくことになるでしょう。

 

「チュスペ予備校」はタイトルを変えて、新連載はそのまま、姉妹誌の「Yha!Hip&Rip」に移れることが決まりました。ネットを使えない読者がこの記事にたどり着くことはないでしょう。チュスペ読者のことを考えると胸が痛いです。どうか、エロ本よ、暗くなるまで待って。

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[Chuッ最後の日。編集部にて読者から届いたご当地ジュースと一緒に]

2014.2.6 姫乃たま